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歯並びは健康のバロメーター(1)

 

 古来、美人のたとえに明眸皓歯という言葉があります。目が澄みきっていて歯が白く美しいという意味です。
  実際、歯の美しさが顔全体に与える影響は、量り知れないものがあります。そして美しい歯とは、単に白く輝く歯という意味だけではなく、むしろ「自然で整った歯並び」「美しい歯列」といった意味が大きいように思います。

 歯列矯正の普及によって、美しい歯並びが比較的簡単に(?)手に入るようになりつつあり、歯並びに対する関心も高まってきているようです。

 このような歯並びは、見た目の影響はもちろん、体全体への影響もきわめて大きなものがあります。この場合、正しくは「歯並び」というより、「かみ合わせ(咬合)」というべきですが、今回は、この「かみ合わせ」と健康についての関連について述べてみます。

 顎の働きには咀嚼や発音などがありますが、中心的な機能は咀嚼及びその関連動作(燕下、くいしばり、歯ぎしりなど)です。
  この咀嚼運動は大きく分けて次の三つの要素から成り立ちます。

(1)歯のかみ合わせ
(2)顎関節
(3)筋肉

 この三つのうちどの一つに問題があっても、顎の機能は十分に発揮できません。三つが互いに調和がとれ、自然にバランスよく働いて、初めて健康な顎の働きができるのです。
  そして、当然のこととして人の体は、正しく健康に機能するように作られているのです。

 ところが、このうちのどれかに不調和が生じると、体の各部に様々な不都合が症状として現われてきます。
  程度の軽いうちは、顎の周辺に限った症状ですが、次第に首や肩、頭、目などにも不都合が生ずることもあり、ひどくなると全身に及ぶ不快症状として現われてきます。

 さきほど述べた咀嚼の三要素(かみ合わせ、顎関節、筋肉)のどこに問題があっても困りますが、実際に最もトラブルを生じやすいのが「歯のかみ合わせ」です。
  ですから「歯のかみ合わせ」の善し悪しで、その人の健康状態は大いに影響されることになります。

 

かみ合わせ異常で起こる症状について

(1)顎関節周辺の症状

◎顎が「カックン」「コッキン」などと音がする。
  これ自体はあまり苦にする必要はないが、他の症状の前ぶれという面もあり要注意。

◎顎関節や周囲の筋肉がいたい。

◎顎が開かない、開きづらい。
  これらの症状は歯との関連がかなりわかってきており、治療法もすすんできています。

(2)首、頭頸部、腕などの異常が起こる

◎首・肩などのこり、頭痛
◎耳鳴り、難聴、めまい
◎眼精疲労

 かみ合わせのゆがみが第2頸椎付近(頭蓋骨の下、上から二番目の背骨)に応力を発生させ、第二頸椎付近の筋肉の過緊張をひき起こしています。当然、椎骨自体も偏位しています。
  かみ合わせが原因の肩こりがどうかは、第二頸椎部の触診でわかります。

 かみ合わせが原因で肩がこっている人は、第二頸椎付近の過緊張が見られ、椎骨自体が偏位(亜脱臼)しているからです。

かみ合わせに不自然が生ずる

上部頸椎のゆがみ、周辺の筋肉が緊張する

筋肉の過緊張のため下部の頸椎もゆがむ

下部の頸椎のゆがみを補障するために、
さらにその周囲の筋肉が緊張する

その隣の頸椎もゆがみ、さらに周囲の筋肉が緊張する

 このくり返しで、椎骨のゆがみと筋肉のこりは、さらに周囲に広がってゆくのです。

 

(3)症状が全身に及ぶ

◎背中の痛み、腰痛
◎食欲不振、胃腸障害
◎高血圧、低血圧、心臓病
◎生理痛、生理不順
◎糖尿
◎湿疹、肌あれ
◎疲れやすい
◎不眠、神経症

 まさか、かみ合わせが原因とは思いもよらぬ症状が出てくることになる。
  かみ合わせのひずみが第二頸椎をひずませ、それが第三頸椎→第四頸椎といった具合に全部の背骨に波及した状態です。
  背骨の中には脳の「しっぽ」といわれる大切な神経の束が通っています。背骨がゆがめば、当然、背骨の中に通っている神経の束に悪影響を与えます。
  特にその「脳のしっぽ」から枝分かれしている太い神経を直接いじめることになります。自律神経をはじめ、全身の神経系が不自然な状態となるわけです。
  また背骨のゆがみは、そのすぐ横の大切な動脈の流れも悪くします。血圧や心臓病などに直接影響が出るのです。

 

不正になる原因   [原因(1)現代生活のゆがみ]

(1)偏った食生活

<1>軟らかな食品の氾濫(かまない食生活)

 私たちの食卓に出てくるものは、口あたりよく軟らかなものがほとんどです。特に子供たちの好物はカレー、ハンバーグ、オムレツ、スパゲティ…どれもあまりかまなくても食べられるような物ばかりです。

 成長期の子供たちがこのように軟らかな物ばかり食べていれば、顎の成長はスムーズには行われず、華奢で小さめの顎ができてしまいます。
  小さめの顎の上には大人の歯は並びきれません。
  場所が足りなくて横にはみ出てしまうデコボコの歯並びとなってしまいます。最近の子供たちには、このような混み合った歯並びの子が非常に増えています。

 また顎を動かす筋肉の成長も当然不完全となり、本来の機能を発揮できず、不自然なバランスの中で働かざるを得なくなります。
  健康法の秘訣の一つである「よくかむこと」「一口100回かむこと」は、特に子供たちに必要なのです。

<2>過剰な動物タンパク、脂肪、糖分の摂取

 人間の進化の歴史をたどれば、人間は本来、限りなく草食に近い雑食である。
  裸の人間の闘争力、敏捷性はすべての肉食動物に劣り、過去何百万年にわたり原始の人間たちにとって貴重な動物タンパク源は貝や昆虫だったに違いありません。

 文明の獲得とともに、北ヨーロッパに住みついた人間は、狩猟・牧畜により多くの肉を食するようになったが、アジア系人間、特に日本人はずっと農耕民族として穀物を主食とし、補助的に魚を食する程度で、肉豚などはほとんど食しない文化をもっていました。

 それが、ここ20〜30年間での食生活の変化は著しい。何千年何万年とかけてくり返されてきた食生活が、突然、激変したのです。
  過剰な動物タンパクや脂質、糖分の害については別項にゆずるが、これらにより人の免疫力や体自体の力は低下することになります。

 アトピーなどが穀物菜食で治癒するのは、アレルゲンの除去というのではなく、免疫システムの正常化によるのです。

 人間の体は本来、多少かみ合わせが乱れようが、背骨が曲がろうが健康に生きていける力を与えられているのだが、不慣れな食物で苦労している生体には、かみ合わせのひずみを解消するだけの力がないのです。

 実際にかみ合わせ異常の症状が、かみ合わせを変えることなく、食事指導のみで症状が改善することは、珍しくない。
  かみ合わせ異常の症状が発現するかどうかは、その人の体の力=食の内容によるところが大きいのです。

<3>過剰な食品添加物(化学物質)

 これは前述したタンパク質、脂質以上に人間の体を消耗させます。
  生体にとっては全く未体験の物質で、かつ全くメリットのない物質をせっせと体の中に入れています。国民全体で壮大な「人体実験」をやっているようなものです。

 この「実験」を通して、耐性の強い人間が生き残り、弱い人間は消えていく。さらに実験のレベルを上げることで、生き残る人間はさらにしぼられ、その中から新種の人間(?)が生まれることになる…、などというのは単なる空想といえるのだろうか。

 

(2)ストレスだらけの現代生活

 広い意味では食生活の乱れもストレスの一つだが、現代生活に順応していくには、多くのストレスを受けることになります。

<1>精神的ストレス

 家庭の中で、学校の中で、近所づき合いの中で、職場の中で……
  これらの中で自己をのびのび発現でき、心が安らぐ場がどれだけあるでしょうか?
  生きていくためには、自己をおさえ、本音と建前を使い分け、本当の自分が何なのかよくわからない生活すら当然と思えてしまう。何と不幸な現代人よ!

 このような精神的ストレスは顎関節はもちろん、体全体の機能を低下させます。かみ合わせがそれほど悪くなくても、精神的ストレスのみで症状が出てくる人もいます。

<2>不規則な生活

 夜ふかしや睡眠不足、不規則な生活が体調をくずし、病気を呼びやすくすることは誰でも知っています。しかし、それでも夜ふかししてしまうのはなぜでしょう。

 現代生活に順応すればするほど、生活は不規則、不健康になるようです。これでは病気の人が増えるはずです。
  ほかにも数えあげればきりがありません。

<3>運動不足
<4>大気汚染
<5>水、飲料水の汚染
<6>電磁波の影響…など

 

(3)見かけの苦痛をとることを目的とした医療保険制度

 歯科保険治療の根元をなす考え方は、悪い歯を削って人工物で補うということです。
  虫歯の治療はそれで何とかなります。しかし、かみ合わせを考えると、それだけでは不完全です。

 手をかけ、時間をかけて正しいかみ合わせを追求していかなければなりません。患者さんにも時間をかけて説明する必要があります。しかし、それに対する保険の評価はきわめて低いというのが現状です。
  時間をかけてじっくりやりたいが、やれば必ず赤字になる。これが現状です。
  多くの歯科医は、このような中でジレンマと闘いなから、ストレスをためています。
  次回はかみ合わせが不正になるその他の原因と、かみ合わせを正常に保つための予防を含め、対策について述べます。

 

 

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